MALIYAが東京・丸の内にあるライブレストランCOTTON CLUBにて12月27日にワンマンライブを開催した。コロナ禍の影響でライブが開催できなかったこともあり2020年は制作活動に注力していたMALIYA。6月に「20/20」を配信、8月にはEP『ruby』『selene』を2作同時に配信リリースするなど、音楽を通じて伝えたい“いま”の彼女の率直な気持ちがより濃く反映された一年だったのではないだろうか。そんな中、自身2年ぶりとなった今回のワンマンライブは、このタイミングで行うことにも大きな意義があったし、「みんなからもらう愛を音楽で返す」という MALIYAのアーティストしての気概が伝わるステージだった。
2ステージ制で行われた本ライブでは、1stでDJ NINA、2ndでKosuke HaradaがDJを務め開演前から徐々に会場を温めた。オンタイムになるとバンドメンバーが登場し、本ライブでミュージックディレクターを担う安藤康平ことMELRAW (sax,fl,synth,g)の合図により演奏がスタート。 すると、真っ黒なドレスに身を纏い洗練されたシックな佇まいでMALIYAが登場し、発声ができない代わりに大きな拍手でオーディエンスが出迎える。「Hard Liquor」の妖艶な雰囲気から、シームレスに「Skin」へと繋げ、ラテンのエッセンスを取り入れた情熱的な「Palma」を披露すると 「今日を無事に迎えることができて嬉しいです」とオーディエンスの前で歌うことができる喜びを口にする。多彩な楽曲を豊かな表現力で魅せるMALIYAのパフォーマンスからは、ライブができる喜びとともに、一音ずつ、一言ずつを噛み締めながら丁寧に聴き手へ届けようとする彼女の音楽に対する姿勢がひしひしと伝わってきた。
また、MELRAWをはじめ岸田勇気 (key)、小川翔 (g)、山本連 (b)、望月敬史 (ds)が作り上げる 生楽器のアレンジも素晴らしい。「Dance to my song」で一気にサビでフロアの熱をあげたかと思えば、聴かせどころのブレイクで一気に音を抜くなど、ボーカル、コーラス、バンドの持つグルーヴを大事にしながらも計算され尽くした音の足し引きを織り交ぜるMELRAWの構成力にはいたく感銘を受けた。 また、2作同時に発表した『ruby』『selene』についてMALIYAは「自粛期間中に音楽を聴く時間が増えました。ライブができない分制作にも没頭できたし、どういう形で皆さんに届けられるか悩んだけれど、気分や場所によってムードを変えてもらえるように2作に分けてリリースすることにしました」とリリース時の心境を振り返り、収録曲を初披露。前半の畳み掛けるようなアッパーな楽曲群から趣を変えた中盤、「Deep Down」「Scent Of Rain」などのバラード曲では、 MALIYAの歌声により重厚感を持たせる大阪朋子(Cho)、早川咲(Cho)のコーラスワークが光っていた。特に、MALIYAが曲作りの際にコーラスにこだわったと話す新曲「Your Last」は、“どんな最初より 君の最後がいい”というサビの歌詞が印象的で、ボーカルとコーラスが重なる部分は オーディエンスもみな思わず息を呑みながらしっとりと聴き惚れていた。
初披露の新曲に会場が余韻に包まれる中、間髪入れず後半戦に突入し、ゲストとして Ryohu(KANDYTOWN)が登場。「Breakfast In Bed」と「Nothing But a Blur」の2曲を演奏し、長い付き合いだという2人が特別なステージで息のあったパフォーマンスを見せた。そのあとは、昔から大切にしている楽曲だという「Bass」など新旧のナンバーを披露し、あっという間に本編が終了した。
アンコールでは、『ego』の収録曲「Numb Hands」をパフォーマンス。憧れのコットンクラブでライブを実現できたことや足を運んだオーディエンスに感謝を述べ、楽曲への想いを語りながら感極まる場面も。演奏がスタートすると1コーラスをピアノのみで歌い上げ、バンドとコーラスが加わってサウンドスケールが増すとともに楽曲のエモーショナルさがあふれる感動的なラストで締めくくった。 世の中が一変し、ライブをすることが難しくなった昨今。だが、今夜のライブはMALIYAのライ ブを堪能できただけでなく、「生の音楽を楽しむ」ことがどれほど私たちの日常に豊かさを与えてくれるのかを改めて教えてもらえたような気がした。
神人 未稀